アイ・ミス・ユー


取り付く島なんか作らせるもんか、と口を真一文字に結んでいたら、金子が申し訳なさそうに肩を落とした。


「あの時のこと、本当にごめん」

「………………なんのことですか?記憶にありませんが」

「俺は覚えてる」

「私は覚えてませんので」

「……あの頃付き合ってた小野寺さんとは、まだ続いてるの?」


金子の最後の質問は、まさかされると思っていなかった予想外のものだった。
ちょっとだけ揺らいで、それでもどうにか平常心を保って抑揚をつけずに答えた。


「半年前に終わりました。ですので、今は仕事を頑張るつもりです」

「そっか」


色々と突っ込んだことを聞かれるようなら突き放してやろうと思っていたのに、金子はこれ以上追求してくることはなかった。


微妙な距離を保ったまま、私と金子はすすきののネオン街を歩いた。








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