アイ・ミス・ユー
3 草食っぽい見た目の人が本気を出した過去
ことの発端は6年前のこと。
部屋の模様替えや家具のDIYが好きだった私は大学ではデザイン系を専攻し、取得できるだけの資格はきちんと取り、インテリアを扱う仕事がしたいと『小坂インテリア』に就職した。
道内では有名な会社だし一部上場企業というだけあって、倍率はけっこうなものだった。
内定をもらうまでに筆記試験や論文提出、幾度かの面接を経た。
自分の好きな仕事が出来る、というワクワク感を胸に入社式へ参加した。
本社の一番大きな部屋であるホールで、1時間半ほど過ごした。
代表取締役社長のありがた〜いお話はもちろん、専務や事務長など代わる代わる話をする。
新入社員は新卒が圧倒的に多くて、男女共にパリッとしたリクルートスーツを着て、男性は清潔感ある髪型と当たり障りのないネクタイや靴などの小物、女性もしっかり髪の毛を束ねて足を揃えて座る。
見渡す限り、ほぼ全員が背筋を正して参加していたように思う。
6年前の私は、付き合っている人がいなかった。
と、いうか。
大学卒業前に別れてしまった。
彼の方が東京に就職が決まり、遠距離は無理だと告げられたからだ。
恋人が去り、手元に残ったのは仕事への熱意だけ。
それならば、この熱意を生かそう!
私はそう決意して、仕事に打ち込もうと心に決めていたのだった。