アイ・ミス・ユー
人数にして約100人の新入社員。
同じ大学出身の人はちらほら見かけたけれど、知り合いってほどでもない。
中には早速仲良くなっている人たちもいて、当時やや人見知りだった私は気後れしてしまっていた。
そんな中、3つの会議室を使って昼休憩を取るように指示されて、なかなか立派なお弁当が並ぶ机にランダムに座らされた。
その時、隣になったのが金子基之だった。
私は正直、彼についての印象はほとんど何も感じなかった。
強いて言うなら、真面目そうで優しそう……くらいなものだったと思う。
「あと何時間くらいで終わるのかな、入社式」
確か、彼の第一声はこんな感じだったはず。
誰に話しかけているのだろう、とキョロキョロしていたら私と目が合ったので、慌ててうなずいた。
「きっとこのあと、配属先が発表になると思うよ」
「買い物とか便利だし札幌市内がいいなぁ。遠いと引っ越さないといけないし」
「地元どこ?」
「帯広。でも大学はこっち通ってたから、市内にアパート借りてるんだ。そっちは?」
「室蘭だよ。私はまだ実家暮らし」
ポツポツと会話したのは、なんとなく記憶にある。
社交辞令みたいな他人行儀な話をした。
私の実家の犬が15歳だからそろそろ寿命だとか、彼が学生時代にやってた家庭教師のバイトの話とか。
天気がいいですね的な話をしなかっただけまだいいと思う。