アイ・ミス・ユー
なんだろうと思って振り返ると、お昼にお弁当を一緒に食べたあの彼だった。
そういえばこの人はどこに配属になったんだろう?
「あ、さっきの。配属先は満足する場所でした?」
広い廊下の隅に寄り、ぞろぞろ帰っていく同期のみんなを横目に彼に聞いてみた。
彼は少し肩をすくめて、苦笑いを浮かべる。
「欲は出しちゃダメだね。岩見沢店だったよ」
「そっかぁ。でもそんなに遠くないじゃない」
「君は?」
「私は、ここ。本店勤務」
「そうか……」
ほんの少し残念そうな顔をして、でも気を取り直したように身長差のある私を見下ろしてきた。
威圧的な感じではなく、ごく自然に。
「金子基之といいます。君の名前は?」
「綾川結子です」
「じゃあ、綾川さん」
「はい?」
緩んでいた彼の顔が引き締まり、そして緊張したような表情へと移り変わる。
なんだろう?と思っているうちに、彼が言葉を発した。
「もしよかったら、連絡先教えてくれないかな。時間があったら、そのうちご飯とか行きたいなって思ったんだけど」