アイ・ミス・ユー
入社してすぐに私の教育係として現れたのは、当時同じ販促部にいた類稀なるセンスと世渡り上手な性格で一目置かれていた、小野寺健也だった。
なによりも彼は非常に容姿端麗で、それだけでも女性社員の憧れ的な存在。
他の部門の同期からも、彼が私の教育係になったことを羨む声が届くほどだった。
いつも私に優しく仕事を教えてくれて、時に厳しく、時に甘く、基本的なことはすべて彼から教わった。
共に過ごす時間が誰よりも多くて、2人きりで残業したことも数え切れないほどあった。
そうしていつしか、お互いにプライベートでも食事をしたり映画を観に行ったりするようになって。
気づけば彼に告白されて。
金子に「仕事に集中したいの」なんてかっこいいことを言っておきながら、本社の中でもイケメンの部類に入る健也と付き合うことになり、私は完全に舞い上がっていた。
当然、金子のことなどすっかり忘れてしまっていたのだ。
たぶん、この時は彼の顔でさえ、もう覚えていなかったと思う。
それほど入社してからの3ヶ月の方が、中身の濃い毎日を過ごしていたのだ。