アイ・ミス・ユー


それまでずっと穏やかだった金子の表情が、ほんの少し切なげに揺れたのが見えた。


どうしてそんな顔をするのだろう?


でもそれを彼に聞く事も出来ず、金子とはそれきり言葉を交えることは無かった。






一見すると、自己主張の少ない物静かな人という金子基之の印象は、この時も同じだった。


しかしそれは、数時間後に一変することになる。







木材を加工する工場をひと通り見学し、社外研修もそろそろお開きという頃。
集団で移動していたら、誰かに肩を叩かれた。


振り返る間もなく、腕を引かれる。


おかげでそばにいた樹理に声をかけることが出来ず、集団から逸れてしまった。


私の腕を引いたのは金子だった。


「ど、どうかしました?急だったからビックリしちゃったんですけど……」


慌てふためく私をよそに、金子はさっき見せていた優しげな微笑みなど浮かべておらず。
冷静な様子で私を見下ろしていた。


「綾川結子さん。俺の名前は金子基之。君の同期。岩見沢店に配属になった。入社式で話したんだけど」

「………………え?」


目を見開いて、彼を見つめる。

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