アイ・ミス・ユー
4 思ってたのと違う
翡翠ちゃん曰く「アベレージマン」の金子基之は、私たちの販促部にすんなり馴染んでいった。
いや、むしろ販促部よりも販売部に馴染んでいるような気がしてならないのだけれど。
「綾川さーん、主任ドコ〜?」
「分かりません、店舗だと思います〜」
「綾川先輩、金子主任の承認が欲しいんですけど」
「午後から見かけてないから、店舗じゃないかな?」
「綾川さん、金子くんは……」
「店舗でしょうっ。おそらく十中八九店舗でしょうっ」
金子基之めぇぇぇ!
あれほど席を外す時は声をかけてくれと言ったはずなのにっ。
広い廊下を大股でずんずん歩きながら、エレベーターを目指す。
現場主義の金子はその考えを変えることなく異動から既に2ヶ月ほど経過していた。
相変わらず事務所にいることが少なく、結局タッグを組まされた私が彼を探しに出ることになるのだ。
てゆーか、もはやサブの存在なんて必要ないんじゃないのか?
ただの小間使いと化している私は、金子探しと部長のパシリみたいなことをやらざるを得なくて、一向に仕事が進まない。
今日だって部長が半月に一度の定例会議に使う資料作りを丸投げされて、しかも期日は明日。
実質締切は今日までみたいなものだ。
店舗と繋がりが深い販促部では、売上の思わしくないコーナーをどうにかいい方向へ導くべく、店舗の改善点を事細かに挙げなくてはならない。
本来その仕事は酒田部長の役目だというのに、彼はほかの仕事があるからと金子に丸投げ。
でも肝心の金子が事務所にいないから、結局やるのは私。
おかしいでしょ、どう考えても。
連日の残業で疲れもストレスもピークに達しつつあった。