アイ・ミス・ユー
30分後。
有言実行というべきかなんというか。
金子とその他8人の社員によって、カーテンの売り場がガラリと様を変えた。
価格がリーズナブルで手の届きやすい出来合いのカーテン類を奥へ押しやり、オーダーメイドの高級カーテンを全面に押し出したのだ。
細々としたレイアウトの変更は現場で判断してやってもいいと決まっているものの、ここまでの規模の変更は必ず上に企画して検討してからじゃないと後々面倒になる。
そりゃ私だって他の社員だって、売上がより良くなるようにしたいというのはひとつの気持ちだけれど、いかんせん企画書を作成して会議に持ち込むのが億劫で。
ましてやファブリック部門では寝具の売上がかなり大きいのもあって、カーテンは正直見て見ぬふりをしていた。
だけど……。
「主任……これ、マジで大丈夫ですか?」
不安げな声を上げたのは、今野くんだった。
彼も手伝いにかり出された一員である。
金子の賭けとも言うべきこのディスプレイに、全員疑心暗鬼なのは確かだ。
「うん、大丈夫。売れるよ」
「主任のその自信ってどこから来てるんですか?」
「岩見沢店の経験」
「これで売れなくても俺らのせいにしないで下さいよっ」
「責任は俺が取るから。まぁ、売れるからなんの問題も無いと思うけどね」
さっきまでのぼっていた脚立を軽々と持ち上げて片付けた金子は、思い出したように私の顔を見た。
「あっ……ごめん、綾川さん。もしかして仕事立て込んでる?」
「もしかしなくてもいつでも立て込んでますが」
「今すぐ事務所戻るよ」
「ダッシュでお願いします」