アイ・ミス・ユー
「面白いですね、主任って。仕事バカって感じで」
事務所に戻りながら、上司によくそんなことが言えるな、と感心するほどの今野くんの危なっかしい発言を、金子はアハハと笑って聞いていた。
「違うよ、仕事が好きなだけだよ。本当は残業も全然気にならないんだけど、綾川さんの顔が怖いから……」
「はい?」
「イ、イエ。ナンデモアリマセン」
私たちのやりとりに、爆笑する今野くん。
笑うところなんてどこにも無いんだけど、とイラッとしたのはきっと私だけなんだろう。
「さぁ、デスクワーク頑張るぞ。よろしくね、綾川さん」
まるで他人事のように呑気な金子に、もはや私は返す言葉も無かった。
代わりに今野くんが会話を進めてくれる。
「でもほんと、主任が事務所にいないと仕事が進まないんですよ!そこんとこは分かってくださいよ?俺、今日合コンだから早く帰りたいし」
「うわ〜、若いなぁ。合コンなんてもう何年も行ってないよ」
「え!マジっすか?じゃあ今夜行きませんか!?主任まぁまぁイケメンだし、そこそこモテると思いますよ!」
「今野、ちょいちょい俺をけなしてないか?まぁまぁとかそこそことか地味に傷つくよ」
2人のくだらない会話に耳を傾けつつ、事務所に向かうエレベーターに乗り込む。
「大体さ、俺に彼女がいないって決めつけるのも失礼だと思わないのか?」
「え、いるんですか?」
「いないけど」
「ほら!じゃあ合コン行きましょうよ!」
金子に彼女がいるだのいないだの、それよりも仕事の話とか出来ないのかなこの男どもは!
1人で呆れていると、エレベーターにもう一人男が乗り込んできた。