アイ・ミス・ユー


「海老のダシが効いてて、味噌のこってり具合とよく合いますね」

「久しぶりに食べたけど、やっぱりここのラーメンは美味いな」


流される女・綾川結子は私です。とほほ。


なんだかんだでまだ地下鉄も動いてる時間帯ということもあり、金子とラーメン屋に来てしまった。


彼の行きつけだという、札幌でもそれなりに有名なラーメン屋。
実は私は初めて来たので、普通に楽しんでいる。


「で、敬語はいつやめてくれるの?」


大きな身体を丸めて、レンゲで濃厚なスープをすすりながら金子が問いかけてくる。


「やめませんよ、ずっとこのままです」

「えー、なんで?」

「上司ですので」

「だから、俺たち同期でしょ」

「この会話、もうすでに前にやりとりしましたよね」


トロトロのチャーシューを箸で一口サイズに切って、口に運ぶ。
ジューシーな肉汁とスープが絡まって、これまた美味しい。何故かくどくない。
しかしながら、金子はくどい。


「せめて会社の外ではやめてくれない?」

「嫌です」

「じゃあ上司命令」

「嫌です、拒否します」

「頑固だなぁ。ガンコちゃんって呼ぶよ」

「ブッ」


そんな名前のキャラクターがそういえばいたなぁと思い出し、ついつい笑ってしまった。


話がうまいぞ、予想外だ。


< 72 / 196 >

この作品をシェア

pagetop