アイ・ミス・ユー
「海老のダシが効いてて、味噌のこってり具合とよく合いますね」
「久しぶりに食べたけど、やっぱりここのラーメンは美味いな」
流される女・綾川結子は私です。とほほ。
なんだかんだでまだ地下鉄も動いてる時間帯ということもあり、金子とラーメン屋に来てしまった。
彼の行きつけだという、札幌でもそれなりに有名なラーメン屋。
実は私は初めて来たので、普通に楽しんでいる。
「で、敬語はいつやめてくれるの?」
大きな身体を丸めて、レンゲで濃厚なスープをすすりながら金子が問いかけてくる。
「やめませんよ、ずっとこのままです」
「えー、なんで?」
「上司ですので」
「だから、俺たち同期でしょ」
「この会話、もうすでに前にやりとりしましたよね」
トロトロのチャーシューを箸で一口サイズに切って、口に運ぶ。
ジューシーな肉汁とスープが絡まって、これまた美味しい。何故かくどくない。
しかしながら、金子はくどい。
「せめて会社の外ではやめてくれない?」
「嫌です」
「じゃあ上司命令」
「嫌です、拒否します」
「頑固だなぁ。ガンコちゃんって呼ぶよ」
「ブッ」
そんな名前のキャラクターがそういえばいたなぁと思い出し、ついつい笑ってしまった。
話がうまいぞ、予想外だ。