アイ・ミス・ユー


金子は残りのスープを飲み干して、サイドメニューで頼んだチャーハンに手を出しながら、ふぅ〜と軽く息をついた。


「一緒に働いてみて、綾川さんは最初に会った時のイメージそのままだったから、ちょっと嬉しかったよ」

「え?私ですか?」

「うん。真面目で、仕事熱心で、なんだかんだで後輩を可愛がってて」


後輩ってどの人のことを言ってるのかしら。
教育係をつとめた中で手を焼いたのは2人だけど。


言うまでもなく、いまだにひとり立ち出来ない翡翠ちゃんと、公私混同が得意な今野拓。
今野くんは仕事面では言うことないけど、どうしても学生気分が抜けなくて私語も多いし、気を抜くとおちゃらける。


「褒めても何も出ませんよ」

「え〜、せっかくだからこの後2軒目誘おうと思ったのに」

「行きませんよ!お腹いっぱいだし!逆に主任は会話するの苦労します!思ってたのと違う!」


食べるのが早い金子に追いつくべく、なるべく急いで麺をすする。
喚く私の隣で、彼は神妙な顔で肩をすくめた。


「俺ってどんなイメージ持たれてたの?」

「え…………。そ、草食系男子……」

「ゲホッ」


正直に素直な感想を述べると、それまで冷静だった金子が飲みかけの水を喉に詰まらせ、派手な咳をして動揺した。


あまりにも苦しそうに咳をするので、おそるおそる彼の背中に手を伸ばしてゆっくりさすってあげた。


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