アイ・ミス・ユー
涙目になって目頭を押さえた金子は、咳がおさまってからようやく身体を起こした。
「なんで草食系男子なの、俺が」
「…………み、見た目かな」
「顔が薄いから?」
「う〜ん、そうなのかな。平和主義っていうか、ことなかれ主義っていうか、そんな感じなのかと思ってたから。ほら、目力そんなに無いし、いつも穏やかだし」
「顔じゃん」
彼は拗ねたように口を尖らせて、両手で顔を覆っていた。
別に顔が薄いことを責めたわけじゃないのに。
そこまで落ち込まれると罪悪感を覚える。
「あ、そうか。綾川さんは小野寺さんみたいなのがタイプなんだもんね。誰が見てもかっこいいって言うような」
「べっ、別にそれは関係ないよ!」
話の論点が完全にズレ始めたので、早急に軌道修正する。
なんとか食べ終えたラーメンの丼の上に割り箸を並べて、そばにあった水を飲み干して息を整え、キツめに金子を睨んだ。
「だからね、草食系男子ってのはあくまで第一印象であって、そうじゃないのはもう分かったの。仕事ではだいぶ強引に事を進めるタイプなんだってこと。結果的にはプラスになってるからいいことだと思うけど」
「お、褒めてくれた」
金子は落ち込んだ表情から一変、身体を起こしてカウンターに肘をついて頬杖をつく。
その顔には満足げな笑み。
「ついでに言うなら、好きな子にもわりと積極的だよ。だから5年前も……」
「わーすーれーまーしーたっ」
耳を塞ぎ、デリカシーゼロ男の言葉を遮ってやった。