アイ・ミス・ユー
すると、なぜか金子に興味を持ち始めたらしい翡翠ちゃんが目を輝かせるようにして身を乗り出してきた。
「へぇ〜、若くして出世コースってことですよね?それって凄いじゃないですかぁ!同期なのに上司っていうのは複雑かもしれないですけど……」
「ま、若干悔しい気はするわね、確かに」
案外素直に負の感情を認めた樹理は、食べ終わったお弁当箱を片付け始めていた。
食後のプリンに取りかかるらしい。
特大プリンのフタを丁寧に剥がしている。
私の方は、今朝ちょっと寝坊してしまったのでお弁当ではなく、昨夜余ったご飯でおにぎりを作ってきていたので、あっという間に食べ終わってしまった。
「あの、金子主任って……もしかして」
翡翠ちゃんは何か期待を込めたような顔で私たちにコソッと、でも確実に聞こえる声で
「超イケメンで高身長でドSな性格ですかっ!?」
と身悶えしながら聞いてきた。
同時に樹理が一口目のプリンを「ゴフッ!」と吹き出しそうになる。
私も樹理も、目を丸くして聞き返す。
「━━━━━はぁ?」
「だからぁ、金子主任って超イケメンで高身長でドSな……」
「あのね、田上さん」
健気に反芻してくれようとしている彼女を止めて、樹理が少々咳き込みつつ答える。
「どんだけドラマや漫画の影響受けてんのよ。世の中の仕事出来る男がみんなハイスペックだと思ったら大間違いよ」