アイ・ミス・ユー
帰り際、絶対に逃すまいと樹理の袖を引っ掴んだ私は、「私は帰る〜!!」と駄々をこねる彼女を強引に連れ出してジンギスカンのお店へ向かっていた。
今野くんが言い出しっぺなのか、金子が言い出しっぺなのか、もはや出どころも不明なジンギスカンの会。
女ひとりっていうのもアレだし、樹理が一緒に来てくれた方が話も盛り上がりそうでいいんじゃないかと。
仕事をどうにか19時には終わらせて、4人でジンギスカン店へと足を運んだ。
「本店は行列ですね〜。6.4の方行ってみますか!」
今野くんの言う通り、目的のジンギスカン店「まるだ」本店は混雑している模様。
歩いて5分しないところに支店の「まるだ」6.4店があるので、そちらへぞろぞろと移動。
運良くそちらは空いていたけれど、お店の中に入ってやっと気がついた。
このお店は、テーブル席が無いのだ。
カウンター席のみ。
なので、おのずと私たち4人は横一列に並ぶことになるわけなのだ。
「ま、ジンギスカンと言ったらやっぱりここだよねぇ」
だいぶ遠いところから、樹理の声が聞こえる。
その彼女に今野くんがすかさず返事をしている。
「タレがたまんないですよね〜。ヤベッ、ヨダレ出てきちゃいました」
「きったないわね。こっちに飛ばすんじゃないわよ今野!」
やいのやいの楽しそうな会話が少し遠い。
なのに私の気分は下がる一方。
なぜならカウンター席の並び順が、悲しいことに樹理、今野くん、金子、私の順からだ。
流れとはいえ、こうなると私の話し相手って金子しかいないじゃない。