アイ・ミス・ユー
春に金子が異動してきて、早数ヶ月。
日本列島全体の梅雨明けも間もなくといった感じで、梅雨が無い北海道にも暑い暑い夏がやってこようとしている。
金子基之は、するすると販促部の中に溶け込んだ。
そして、今までの本店販促部のやり方がどうとか一切気にせずに、あくまでもお客様にいいものを売るため・欲しいものを見つけてもらうため、とアレコレ手を変えて提案してくる。
前任の沢渡主任は、時々現場に行くこともあったけど基本的には事務所でデスクワークに励んでいて、長いものに巻かれるタイプなのかあまり自己主張はしない人だった。
先立ってこうした方がいい、などと言うことはなく、正直あまりやる気は感じられなかった。
金子が来たことによってそういった雰囲気が一変したのは間違いないことで。
主任が現場である店舗に来れば販売部も現場の意見を伝えられるし、お客様の動向を確認することも出来る。
あながち現場主義も悪くないような気がしてきた。
(ただし、販促部のデスクワークは滞りがちではあるけれど)
見た目だけは馬か、もしくはシマウマか、もしくはラマかラクダか、むしろキリンか。のんびりほんわか草食系男子の金子だけど、中身はわりと芯が通っているらしかった。
マイナスのマイナスの、もっともっと深いところからスタートした彼の印象は、徐々にまともなものに変わっていっているのは事実。
それは絶対、本人には言えない。
でも、なんかいまいちまだ掴めないというか。
食えないところがあるんだよね。
草食系男子じゃなくて、不思議系男子じゃないのって思う時がある。
何を考えているのか、分からないような。