アイ・ミス・ユー
ジンギスカンの煙に巻かれながら、私たち4人はビールを飲み、肉に食いつき、野菜を堪能した。
今野くんの恋愛相談という名のヘタレエピソードを聞かされ、年上である私たち3人がちょいちょいツッコミを入れるという形式だ。
横一列の席のため、端っこの樹理と金子は聞き返しが多かったけれど。
だけど、それなりに楽しめた。
いいくらい食べて飲んで、お腹いっぱいになった頃にようやくお店を出ることとなった。
「俺、めっちゃ楽しかったです!本当にありがとうございます!ごちそうさまです!」
いつまで経っても新入社員のような今野くんの勢いのいいお辞儀が面白くてクスクス笑っていたら、彼がしめたとばかりにイタズラっ子のような目つきに変わった。
「やっぱりそうですよね!楽しすぎて、まだ帰りたくないっすよね!」
「え?帰るけど」
「何言ってるんですか!歌わなくてどうするんですか!」
来た、カラオケ男の強引な誘い。
いつもこんな感じで結局二次会へもつれ込み、カラオケで歌わされるのだ。
それが分かっている樹理は、かったるそうに腕を組んで「私は行かないわよ」と拒否の姿勢を示す。
「俺もカラオケは苦手だから……」
徐々にさりげなく遠ざかりながらフェードアウトしようとする金子を見つけて、今野くんがガッシリと彼を捕まえた。
「冗談キツいですよ、みなさん!綾川さんと山崎さんが歌うまいのは知ってますから!主任だって普段なかなかいい声してるんだから、歌ったらもっとヤバいんじゃないですか〜?」
「俺は違う意味でヤバいんだけど」