アイ・ミス・ユー


ボソボソ伝える金子の意見などお構い無しで、今野くんは嫌がる私と樹理を帰らせるものかと強引にカラオケ店へ引っ張り出した。


彼はカラオケ好きを豪語するだけあって、確かに歌はうまいのだけれど。
歌うのを強要してくるのはどうなのよ。
それも上司だろうが先輩だろうが誰でも構わず誘うのだから、心臓が強いとしか思えない。


言い換えれば人懐っこいのか?


そうこうしているうちに今野拓ワールドに巻き込まれた私たちは、ジンギスカン独特の香りを身にまといつつカラオケルームへと入ることとなったのだった。










「この年で4人でカラオケなんて完全に罰ゲームよね。明日も仕事だし帰りたいわ……」


樹理がやる気のない顔で、今流行りの曲を振り付きで歌いまくっている今野くんを眺める。


若さゆえなのか、キレッキレのダンスがこれまたちょっと様になっているから面白い。


これだけカラオケが好きならばひとりで来ればいいものを、今野くんはひとりカラオケはしたくないのだと言う。
ラーメンも焼肉も映画も、ひとりでお店に入ったことはないらしい。


何故なのか聞いたら、「友達いないって思われたくないですもん」と平然と答えていた。
私なんて全部やったことあるっていうのに。


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