アイ・ミス・ユー
相当期待していたらしい翡翠ちゃんは、ガックリと肩を落として「なんだぁ」と口を尖らせた。
「イケメンじゃないのかぁ……」
「残念ながら金子はイケメンの部類には入らないかな〜。あ、ブサイクってわけじゃないのよ。なんて言うんだろう、……………………平均的?」
極端な表現で伝えるのはさすがに金子に申し訳ないので、当たり障りなく教えたつもりだった。
けれど、私の答えに納得しないのは樹理の方だった。
「え、そう?金子くんは確かにイケメンではないけど、モテなくはない顔だと思うよ。イケメンではないけど。イケメンではないけど」
「あはは、山崎先輩ってば『イケメンではない』って連呼しすぎです〜」
「だって本当にそうなんだもの。田上さんも金子くんを見たら分かるわよ」
なんだかんだで最終的には楽しそうに笑い合っている樹理と翡翠ちゃんを見て、私は黙っていようと口を閉じた。
私の記憶に残っている金子基之。
最後に彼と会ったのは5年前の社外研修の時だから、その思い出しかない。
彼はいつも落ち着いていて、発言する時の話し方は穏やかで、そしてふとした時に笑う顔は優しそうだった。
大人数いる同期の中ではそんなに目立たない方だったと思うし、どちらかというと物静かなイメージがあった。
だからこそ、あの時彼が起こした行動が私には信じられなかったのだ。
そんな彼に気が動転して、私は━━━━━。
あぁ、やっぱり会いたくないな……。
ずーん、と気分が沈んでいくのが分かった。