アイ・ミス・ユー
「弱点が見えないようにしてるのは仕事だけ。それ以外は欠陥だらけ。今野にアドバイスなんか出来ないぐらいヘタレだよ」
「部屋が汚いとか?同じワイシャツを3日着てるとか?」
「そういうことじゃなくて」
金子は首を振って否定し、視線を私に向けてきた。
「好きな子に好きって言えないとか、積極的に行って拒否されるのが怖くて行けないとか、連絡先も聞けないとか。そういうこと」
「…………………………草食系男子じゃん」
見た目のまんまじゃない。
それに、そういう熱っぽい視線を送ってくるのはやめてほしいんですが。
「恋愛においてはね。だから別に不思議系男子じゃないよ、俺は」
「仕事ではガンガン行くのに恋愛では出来ないなんて、不思議系男子よ」
自然と歩く速度が速くなり、私も金子も競歩の選手みたいにタッタカ歩く。
夜道を2人で何やってるんだか、追いかけっこするでもなく並んで歩いている。
「不思議系男子は嫌い?」
うわ、駆け引きっぽいこと言ってきた。
もはや私は彼の顔を見れない。
見ないまま、曖昧にはぐらかす。
「時と場合によるかな」
「時と場合かぁ……」
マンションが見えてきた。
私は左のマンション、彼は右のマンションだ。
なんちゃって競歩の、ゴールが近づいてきた。