アイ・ミス・ユー
お互いに息を乱しながら、ようやくたどり着いたマンションの前。
職場でも顔を突き合わせて、家もここまで近いというのはある意味奇跡。
よくあるじゃない。
幼なじみ同士で家が隣で、行き来しているうちに恋愛感情を抱く的な。
そういうのにはおよそ発展しなそうな私と金子の雰囲気なのに、ほんの少しずつだけど毎日距離が近くなっているような気がしたりして。
だけど私は目の前にいるこの人を、5年前に突き放したわけで。
近づいていいわけないのだ。
「今日、楽しかったね。またジンギスカン行こう、みんなで」
最後に金子が付け加えた、「みんなで」っていうのがまさに傷つきたくないための予防線なのかもしれない。
私は小さくうなずいた。
「うん。またみんなで行こう」
「……………………おやすみ」
「おやすみなさい」
私と金子はそう言葉を交わして、それぞれのマンションへと帰っていった。