アイ・ミス・ユー


「私、あっちの車に乗りたかったです〜。あのかっこいい車に!」

「悪かったな、どうせ軽だよ」


前のふたりの話の流れで、私はほんの少し身を乗り出して前方を走る黒いSUV車を眺めた。
あれは金子が運転しているのだ。


独身組と酒田部長を合わせて全員で8人ということで、車2台出そうということになった。
それで、金子と今野くんが立候補してくれたのだ。


あちらには私たちより先輩の社員や、部長が乗っている。


「乗せてやってるだけありがたいと思ってくれよな」


言いたい放題の翡翠ちゃんに文句を言う今野くんが少しだけ不憫に思えて、私が代わりにお礼を言っておいた。


「今野くん、ありがとね。私は軽でもなんでもありがたいよ」

「ほらな、綾川さんを見習えよ!」

「はぁ〜い」


すっかり遠足気分らしい翡翠ちゃんは、どこかで買ってきたお菓子を口に放り込みながら諦めたようにシートに身を沈めていた。








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