アイ・ミス・ユー
前方にはスナック菓子が入った軽い袋を今野くんに押し付けている翡翠ちゃんの姿が見えた。
あのふたりはいつもあんな風にふざけているけれど(今野くんは迷惑がっているが)、あれはあれでなかなかいいコンビに見えてしまう。
案外、先輩後輩のいい関係が築けていたりして。
隣を歩く金子の私服姿は、ちょっと新鮮。
スーツだと普段よりも何割か増してかっこよく見えるというけれど、会社にいる彼しか知らない私にとってはこっちの方が意外と好………………。
と、ここまで考えてひとりで驚愕する。
今、何を考えてたの、私!
好きとか思いそうになってなかった?
そんなバカな、とひとりで落ち込んでしまった。
キャンプ場ではレンタルしたテントを部長と金子が組み立てて、テーブルやイスや鉄板などを他の男性社員が設置する。
バーベキューの支度を放り投げて、翡翠ちゃんが男性陣の周りをちょろちょろ動き回っていた。
「手伝いますぅ」と金子に声をかけるも、丁重に断られている。
「危ないからいいよ。バーベキューの準備の方、お願いしてもいいかな?」
「私、包丁握ったことないんで出来ないです〜」
「ヘ、ヘェー、ソウナンダ……」
返答に詰まっている金子を遠目に見て、私はキャベツを手早くザク切りしながら笑ってしまった。