偽りの姫は安らかな眠りを所望する
「ここをお使いなさい。先に届いた荷も運んでありますよ」
「ありがとうございます。でも、こんな立派なお部屋を使ってもいいんですか?」
案内されたのは、簡素ながら最低限の調度も揃ったひとり部屋で、てっきり、他の使用人との相部屋だと思っていたティアは驚いた。
ヘルゼント邸では香草畑の近くに建つ小屋は、部屋というより仕事場で寝起きしているという印象のほうが強かったから、こざっぱりとしたこの部屋がとても新鮮に映る。
「使わずに部屋を余らせておくよりも効率が良いのです。そのかわり、掃除は自分できちんとしてくださいね」
「はいっ! もちろんです」
興奮気味に返事をすると、そのあまりの勢いのよさによってカーラに苦笑されてしまう。
こほんと咳払いされ、「度々申し訳ありません」とティアは首を縮めた。
「支度が整ったら下へいらっしゃい。館の中を案内しながら、他の使用人たちを紹介しましょう」
言い置いて出ていくカーラに一礼してから、一つだけある窓を開け放つ。
少し埃っぽかった空気が、新鮮な乾いた空気と入れ替わり、やはりそこに混じる薔薇の香。
どこかに薔薇園があるのだろうか。
ティアは小さな窓から身を乗り出して見渡してみたが、ここから目の届く範囲にはなさそうだ。
あとで誰かに聞いてみよう。
ティアは、唯一手で持ってきた鞄を開ける。
その中から使用人仲間から餞別にもらった、真新しい真っ白の前掛けを取りだして身に着けた。
「ありがとうございます。でも、こんな立派なお部屋を使ってもいいんですか?」
案内されたのは、簡素ながら最低限の調度も揃ったひとり部屋で、てっきり、他の使用人との相部屋だと思っていたティアは驚いた。
ヘルゼント邸では香草畑の近くに建つ小屋は、部屋というより仕事場で寝起きしているという印象のほうが強かったから、こざっぱりとしたこの部屋がとても新鮮に映る。
「使わずに部屋を余らせておくよりも効率が良いのです。そのかわり、掃除は自分できちんとしてくださいね」
「はいっ! もちろんです」
興奮気味に返事をすると、そのあまりの勢いのよさによってカーラに苦笑されてしまう。
こほんと咳払いされ、「度々申し訳ありません」とティアは首を縮めた。
「支度が整ったら下へいらっしゃい。館の中を案内しながら、他の使用人たちを紹介しましょう」
言い置いて出ていくカーラに一礼してから、一つだけある窓を開け放つ。
少し埃っぽかった空気が、新鮮な乾いた空気と入れ替わり、やはりそこに混じる薔薇の香。
どこかに薔薇園があるのだろうか。
ティアは小さな窓から身を乗り出して見渡してみたが、ここから目の届く範囲にはなさそうだ。
あとで誰かに聞いてみよう。
ティアは、唯一手で持ってきた鞄を開ける。
その中から使用人仲間から餞別にもらった、真新しい真っ白の前掛けを取りだして身に着けた。