君に捧ぐ、一枝の桜花
願い
「防人、倒れたらしいよ」
「今なら、近づけるんじゃない?」
「無理だよ。でも、死ぬのかなあ?ねえ、防人って死ぬ瞬間が一番危ないって知ってた?」
「知ってる、知ってる。その時、唯一力が弱まるから下手したら魂ごと食べられるんだよね」
「美味しいのかな」
「きっと、美味しいよ。だって、防人だもの。普通の人間よりずっと美味しい」
「じゃあ、その時は皆で食べに行こうか」
「そうしよう、そうしよう」
病院周辺に住む霊たちの声。それがひそひそと吉野の耳に聞こえる。
(どうせあいつは、お前らの餌食にはならん)
不機嫌そうに木々をつたい、病室に向かう。だから、吉野には聞こえなかったのだ。
「でも、もうあの防人は『迎え』が来てるから無理だ」
その霊の声を。