君に捧ぐ、一枝の桜花
「・・・我が視えるのか」
「視えるよ。声もちゃんと聞こえる」
少年は枝から窓辺に降り立った。素足で降り立つ床は冷たくないのだろうか。
「君は精霊なんだね」
「いかにも。我は染井吉野の桜に宿る精霊だ。名は吉野と申す」
「よ、し、の、かあ。音の響きが綺麗で、いい名前だね」
明は一音一音噛み締めるように呟いた。
「そうか?」
「僕は明だよ。年は17」
「あきら?」
明は糊の利いた布団が敷かれているベッドに腰をかけた。
それは2、3日に一度のペースで看護師が持って行き、洗濯するお陰でいつも清潔だった。
「そう、明るいっていう字の明って書くんだ」
サイドテーブルに置いていた書きかけの楽譜の空きスペースに「明」という文字を綴って、吉野に見せる。吉野は綴られた文字を見て「なるほど」と小さく頷いた。
「君のよしのっていう名前は、もしかして吉っていう字に野薔薇の野?」
こう?と明が綴った文字に再び書かれた文字を吉野は見て大きく頷いた。
「ああ、それだ。日本語ではそう書く」
吉野は吉野でいつの間にか窓辺に座っていた。
明は足をぶらぶらと揺らしながら、そうだと言葉を洩らし思い出したように吉野に尋ねる。
「視えるよ。声もちゃんと聞こえる」
少年は枝から窓辺に降り立った。素足で降り立つ床は冷たくないのだろうか。
「君は精霊なんだね」
「いかにも。我は染井吉野の桜に宿る精霊だ。名は吉野と申す」
「よ、し、の、かあ。音の響きが綺麗で、いい名前だね」
明は一音一音噛み締めるように呟いた。
「そうか?」
「僕は明だよ。年は17」
「あきら?」
明は糊の利いた布団が敷かれているベッドに腰をかけた。
それは2、3日に一度のペースで看護師が持って行き、洗濯するお陰でいつも清潔だった。
「そう、明るいっていう字の明って書くんだ」
サイドテーブルに置いていた書きかけの楽譜の空きスペースに「明」という文字を綴って、吉野に見せる。吉野は綴られた文字を見て「なるほど」と小さく頷いた。
「君のよしのっていう名前は、もしかして吉っていう字に野薔薇の野?」
こう?と明が綴った文字に再び書かれた文字を吉野は見て大きく頷いた。
「ああ、それだ。日本語ではそう書く」
吉野は吉野でいつの間にか窓辺に座っていた。
明は足をぶらぶらと揺らしながら、そうだと言葉を洩らし思い出したように吉野に尋ねる。