君に捧ぐ、一枝の桜花
「伽夜という少女は母親の死を知っているのか」
「知らないだろうね。きっと、引っ越した時から「母親は死んだ」って言われてる」

そう言わなければ、つじつまが合わなかったのだろう。

「お前は妹のことはどう思ってるんだ」
「伽夜がいなくなった後も傍に居てくれたけれど、璃珠はやっぱり伽夜の妹としか見れないよ」
「こんなに似ているのにか?」

さっき持ってきた写真の他にもう1枚写真があった。それはおそらく隠し撮りされたもので、制服姿の少女が通学しているときの写真だ。その少女は明が大事に保管している点から「伽夜」だと思われる。さっき見た璃珠と髪形のみ違うだけで容姿は瓜二つだ。一卵性の双子らしい。

「馬鹿だなあ、吉野。姿なんて関係ないよ。大事なのは魂、心だよ」
「・・お前はまだ、この少女が好きなんだな」
「そんなの、当たり前すぎるよ」

悲しそうに笑う明の姿は弱弱しく痛ましい。



『・・寂しくはないよ。ただ悔しくて、もどかしいだけ。逢いたい人に・・逢わないといけない人に今の僕じゃ逢えないから』


『逆に言うけれど、死にたいのに死ねない人の気持ちは分かるの?逢いたい人にも逢えないのにっ!!』

過去に言った明の言葉を思い出す。

『逢いたい人』

『逢わないといけない人』

これらは、話に出た想い人の『伽夜』という少女のことだったのだろう。


「・・・・っつ」

吉野はかける言葉が見つからなくて、ただ明の姿を見ているしかなかった。
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