君に捧ぐ、一枝の桜花
再び
今年も神社の境内には満開の桜が咲いた。
風に吹かれ、花びらが舞う。
吉野は花を見ながら、ぼんやりと約一年前を思い出していた。


明が吉野に望んだ事が他にもあった。

『僕、見てみたいなあ。吉野の桜』

それを吉野は思い出したのだった。
病室を飛び出して、神社まで戻り自分の宿る桜木の枝を1つ折った。


そして再び、病室に戻ってきた。
枝には青々とした葉がいくつもついていた。
吉野はその枝に力を注ぐ。
葉は枯れ、代わりに蕾がつき、膨らんで開花した。
それを枕元にそっと置く。

「次、出逢ったならば名を呼んで友になってやろう。だから、しばしさらば」

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