君に捧ぐ、一枝の桜花
吉野が窓に手をかけたまま、明の方を振り返る。何故だという表情をしている。

『吉野。お願いだから、また僕のところに来て?』
「・・っつ」

急に吉野がふいを食らったように顔を歪めた。

「お前・・。我に呪をかけたな」
「へ?」
「言霊だ、言霊。強い念を込め声にした事が現実の事象に影響を与えることだ!お前が我にまた参れと申したお陰で、それに従わなければならない」
「従わなくてもいいんじゃないかな。強制じゃないからさ」

どうやら明は無自覚のようだった。吉野はその様子に肩を落とす。

「もう遅い・・。終わった後に申しても遅いだけだ」
「なら、また吉野に会えるんだね!嬉しいなあ」
「・・・。さらば」

嬉々として喜ぶ明はそのままに吉野は空へ足を踏み出した。明はひょいとベッドから降りて窓辺に立って、もう姿が見えない吉野に向かって叫ぶ。

「うん!ばいばい!気をつけてね!」
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