どこまでも、堕ちていく。

「すみません!てっきり新卒の先生かと」
「新卒では担任は持たせてもらえない幼稚園が多いです。自分は相模原市の幼稚園で4年ほど勤務経験があります」
「そうなんですか… 良かった」
「不安にさせてしまってすみません」
「あ、そういう意味では…」

慌ててフォローしようとしたれど、どうやら誤魔化せなかったようで彼はニコニコと微笑んでいた。
顔に不安という気持ちが出ていたのかもしれない。

「よく新卒だと間違われるんです。お母さん方からすれば不安ですよね?自分ただでさえ小柄で頼りないですし…」
「そ、そんなことないです!!」

また大きな声を出してしまい、由美たちの不思議そうな視線を集めてしまう。

「彩さん何ムダ話してんのー?ほらっ、早く手を動かす!」
「わーごめんなさいっ」

由美たちに軽くお辞儀をしてからふと直樹のほうを見ると、彼も笑顔で頭を下げている。
まるで少年のような無垢な笑顔。
…やっぱり29歳には見えないわ。

「そういえば相模原の幼稚園で働いてたんですか?私の地元もそっちです」
「そうなんですか?俺も実家が相模原なんですよー」

詳しい場所を尋ねてみると実家が隣町であることが判明した。
…あ、そっか。
この間、"初めて会った気がしなかった"のはそのせい?
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