どこまでも、堕ちていく。
突然名前を呼ばれて振り返ると、そこには宅配業者の制服を着た1人の男性が立っていた。
「隆志?」
「やっぱり彩だったか」
深く被っていたキャップを上げニコッと微笑むその男性。
町田隆志、28歳。
実家がすぐ近くで高校を卒業するまでずっと一緒に成長してきた、いわゆる"幼馴染"だ。
お互い東京に出てきてからもたまに会っていたけどここ最近はお互いに忙しくて会う機会がなかった。
最後に会ったのは確か2年前のお正月、地元の同窓会だったと思う。
「雅紀か!大きくなったなー」
隆志に頭を撫でられ恥ずかしそうに俯いている雅紀。
挨拶するように促すと小さな声で"こんにちは"と言う。
普段だったら私の後ろに隠れてしまうのに何故か隆志は平気みたいだ。
「4月からこのエリア担当になったんだよ。だからもしかしたら彩に会えるかなーと思ってたんだけど」
「そうなんだ!びっくりしたよ」
懐かしくてお互いの近況などで盛り上がっていると、幼稚園の塀の向こうから直樹がひょこんと顔を出した。
「月影さーん。そろそろ幼稚園始まる時間で… あ!」
「あれっ? 山本先輩!?」
…えっ?