どこまでも、堕ちていく。
「何だかすみません」
「え?月影さんが謝ることじゃないですよ」
「いや、もう姉弟みたいなもんなので」
「そうなんですね。まああれが彼のいいところでもあるんだけど!それにしても…」
"ひとの巡り合わせって不思議ですねー"
ふいにそう呟いた彼から、なぜか私は目が離せなくなった。
男性にしては小柄なほうでヒールを履いた私とはほとんど身長が変わらない。
とても年上には見えない彼だけど、どこか渋い雰囲気を持ち合わせていて発する言葉の1つ1つも奥が深い。
きっと精神的に大人で心がすごく綺麗な人なんだろう。
…何となくそんな気がする。
単純に、彼がどういう人なのかもっと知りたいと思った。
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「あ、このあいだのオジサンのくるま!」
雅紀の言葉に振り返ると、トラックの窓から隆志が手を振っているのが見えた。
しばらくして隆志がトラックから降りてこっちへと歩いてくる。
「買い物帰り?ちゃんと主婦してんだな」
「当たり前でしょ」
雅紀の頭を撫でる隆志を横目で見ながら、私はキョロキョロと周囲を見回した。
幼馴染とはいえども周囲から見れば1人の男と女。
変な誤解をされたら後々面倒なことになる。