どこまでも、堕ちていく。
クールな感じは普段と変わらない。
だけどいつもは私にほとんど関心を示さないのに。
今日の道弘は、私に対して何かしらの強い感情を持っているみたいだ。
雅紀を寝かしつけた後すぐに寝室に向かうと、スーツを着たままの道弘が無表情のままベッド脇に立っていた。
その表情に思わず尻込みしてしまう。
「どうしたの?スーツくらい脱げ…」
「彩、俺に隠し事あるだろ?」
「え?」
「今のうちに言っといたほうが良いよ」
今までに見たことのない表情と低めの声に、私は少しだけ恐怖を覚えた。
「何のこと? 私隠し事なんて」
「これ」
無表情のまま差し出された道弘のスマホに写っていたもの、それは私と隆志のツーショット写真だった。
この間会った時のものだ。
「この男は誰?」
「何これ? 何で道弘さんがこんな画像…」
「誰だって聞いてるんだよ!」
予想していなかった道弘の大声にビクンと肩が跳ねる。
彼がこんな風に声を荒げたことは今までになかった。
「この人は私の幼馴染だよ。ほら、前に話さなかった?町田隆志くん」
「知らない」
表情を変えないままそう呟く道弘。
「何度か話したと思うんだけど…」
「忘れた」
隆志のことは確実に話したことがあるのに。
今の道弘に何を言っても納得してもらえそうにないけど。
「その画像は俺の同僚がたまたま見かけて撮ってくれたものだ」
「え…」