どこまでも、堕ちていく。

「ああ…」

彼は私の顔も見ないまま玄関を出て行った。
最近はずっとこんな感じー。

実はあの後、もうひと揉めあったのだ。
"2人で会うわけではないし、今度の食事会には行かせてほしい"
そうお願いしたけど道弘に却下された。
隆志は旦那も誘えば?と言ってくれたから、それも提案してみたけど首を縦に振らなかった。
それどころか2度と会うなとまた念を押された。

…正直、自分の旦那がここまで頑固だとは思わなかった。
2度と会うなと言われても、隆志は親同士も仲が良い幼馴染。
しかも隆志の奥さんとも顔見知りだ。
ここ数年は会えてなかったけど、できることならこの先の人生もずっと仲良くしていきたい大事な人たちなんだ。
もちろんそれ以外の友達も。
いくら旦那でもそこまでは譲れない。






「なおきせんせー!」

直樹を見るなり走り出した雅紀。
慌てて雅紀を追いかける。

「雅紀くんおはよう。今日も元気だね」

直樹に髪をクシャクシャされて微笑む雅紀。
彼が大人にここまで懐くのは本当に珍しい。

ふと直樹と目が合って軽く会釈し合う。
まるで少年のような笑顔に何故か胸が締め付けられる。
上手く言えないけど、彼の明るくて真っ直ぐな姿を見ていると自分が恥ずかしくなるんだ。
きっと彼は私とは正反対の世界にいる人。

「そういえば隆志に誘われたんですよ。相模原会でしたっけ?地元のみんなで集まろうって」
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