どこまでも、堕ちていく。
道弘の不適な笑みに少しだけ恐怖を覚えた。
ようやく開放された右腕がキリキリと痛む。
「黙って出掛けようとしたことは謝ります。でも…」
「でも?」
「パパが思っているようなことは絶対にないから。今日だって隆志だけじゃなく、他にも地元の友達がたくさん来る予定だし」
「知ってるよ。メール見たし」
「だったら!」
「たとえ食事会は他の奴らがいても、その後に何が起こるかなんて分からないじゃないか。どうせお前らそのつもりだろ?」
「そんなこと…。私が信用できないの?」
そう言った直後、私は再び腕を掴まれ壁に押し付けられた。
「できないな。旦那に無断で男とメールしたり会うような女」
「…」
私を見下ろす道弘の目が怖い。
何年も一緒にいたのに彼のことをこんな風に感じたことはなかった。
たとえ空虚感を感じる夫婦生活だったとしても。
「今度勝手なことしたら許さねぇから」
…この日を境に、彼は少しずつ変貌していく。