どこまでも、堕ちていく。

時間にすれば多分ほんの2,3秒のこと。
だけど
まるで時間が止まったような不思議な感覚に陥る。


「新任教論の山本直樹です!今日からさくら幼稚園でお世話になります」

彼のその言葉にハッと我に変った。

「よろしくお願い致します!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

新任教論というより、由美が言う通り"実習に来た大学生"にしか見えなった。
ベビーフェイスだし女の子のようなシャープな顔立ち。
身長も小柄なほうで正直どこか頼りない。


「何だか学生さんみたいな先生だったね」

子どもたちを幼稚園に送り届けた帰り道、立ち寄ったカフェで由美がそう呟く。

「新卒なのかな?ああいう人が担任になると正直不安よね」
「確かに。でも、さすがにまだ担任はないんじゃない?」

由美の言葉に返事をしながらも何故か私は上の空だった。
さっきの"あれ"は何だったのだろう?
まるで時間が止まったような気がした。

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