どこまでも、堕ちていく。

思わず大きな声を出してしまった私に、旦那の道弘の冷たい視線が注がれる。

「なに、大きな声出して」
「ごめんなさい。でも雅紀の担任の先生が…」

珍しく早く帰宅したと思ったら、会社から大量の書類を持ち帰ってきた道弘。
リビングで書類を広げて少し不機嫌そうな彼に、少しだけ遠慮しながら話を続ける。

「雅紀の担任の先生がね、昨日学校を卒業したばかりのような新人さんなんだけど」

しばらく無言で私の言葉を聞いていた道弘。
だけどすぐに書類に視線を落として呆れたように口を開く。

「若いってだけでそこまで心配しなくても。幼稚園経論なんだからちゃんと学校出て資格持ってるんだろ」
「そりゃあそうだろうけど」
「じゃあ問題ない。余計な心配する暇あったら雅紀寝かしつけたら?」
「…」

昔からクールで論理的思考な道弘だったが、結婚後はますますそれが増した気がする。
というより最近は家庭よりも仕事重視で、私や雅紀に対して大きな関心を持っていない感じだ。
悪気はないんだろうけど時々無性に寂しくなる。

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