ケンショウ学級

「ちょっと待って、入ってるから」

ん?春馬の声。

「あ?どんだけ経ってんだよ」

すると外から声が聞こえた。

佐野くん?

恐らく佐野くんがトイレに入ろうとして春馬が止めてくれたんだろう。

僕は本に書かれたメッセージの驚きを隠せないでいたが、またワイシャツの中に本を隠す。

そして、トイレの水を流してトイレを出た。

「クソまでのろいってなんだよ根暗」

トイレから出てきたばかりの人にそこまで言うかな。

争うつもりはないから僕は形だけの謝罪をする。

「ごめん」

佐野くんはちっと舌打ちをしてトイレに入っていった。

「ごめん藍斗。佐野のやつ全然話聞いてくれなくてさ」

春馬はそう言って謝ってくれた。

「うん、それは大丈夫だよ。

ねぇ、春馬?」

「ん?」

僕は今見たことを伝えたかった。

でも、何故か今はまだ話してはいけないと思った。

「…………早くここから抜け出したいね」

「ああ、身体なまっちまうから部活出たいよ」

「こんな状況でもテニス?家に帰りたいとかじゃないのかよ」

そう言って僕らはだいぶ久しぶりに笑ったような気がしたんだ。

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