ケンショウ学級
「藍斗!藍斗!!」
身体をがたがたと乱暴に揺さぶられる。
僕は朦朧とした意識の中で、無理矢理に目を覚ました。
「なんかオカシイ!見ろ」
僕は目を擦って、ぼやける視界で見渡した。
あれ?なんだこれ。
「え、たったこれだけ?」
いつもの密室より更に小さな部屋。
造りはこれまでの密室と同じで、暗幕の様な物は見られないから、恐らく二回目の実験の見学した部屋を一回り小さくした感じだ。
その部屋の中に、僕と僕を起こしてくれた春馬。
それに、亮二に友澤くん、原田さん、中澤さん、佐野くん、雨宮さん、仁科くん、田口くんに堀井くん。
小池っちがいない…………それに寺井くんと眞木さんまで。
「この部屋にいたのはこの11人だけだ。残りの20人が居ない」
「なっ…………それじゃあ」
可能性は二つ。
僕ら11人が実験対象となるのか、もしくは残りの20人が実験対象になるのか。だ。
「今までの傾向からするとこっちが危ないな」
春馬はそう言う。
僕も正直その意見に賛同する。
これまでアイツは少人数を対象にしてきた。
一回目『パブロフの犬』では野比先生の一人。
二回目『ブアメードの血』では眞木さん、中村さん、堀田くんの三人。
もし、少しずつ人数を増やしているのだとしたら20人の団体よりも、こっちの11人のグループになるのは自然なことだった。
「おい、根暗」
すると急に佐野くんが声をかけてきた。
「なに?」
「お前、昨日トイレで何してた?」
「えっ!?」
僕は心臓が激しく脈打つのを感じた。
声が少し震える。
「何ってトイレでトイレ以外になにするって言うの?」
佐野くんは睨み付ける目を逸らさない。
いつのまにかこの部屋にいた皆の視線は僕と佐野くんのやり取りに集まっていた。
「トイレットペーパー」
「え?」
トイレットペーパーがなんだっていうんだ?
「お前がトイレに入ってた時間は小便にしては長すぎた。ならクソでもしてたのかもしれねぇが、お前は水は流したくせにトイレットペーパーは使ってなかった」
確かに僕はトイレをしていない。
あの本を読んでいたからだ。
「なんでトイレットペーパーを使っていないって分かるのさ?」
震える声でそう聴いた。
佐野くんは不敵に笑う。