ケンショウ学級

モニターにアイツが写る。

実験後の腹具合からして恐らく。

「さぁ、随分と寂しい教室になってしまったね。でも、元気だしてね!

さぁ、おまちかねの夕食だよ」

すると、教室の前のドアの向こうでいつもの多きな物音がした。

「実験も長くなってきて疲れてるだろうから、消化の良いものを選んでみたんだ。

だから今日も残さず食べてね」

それは、たまたまだった。

特に理由もなく僕はその人のことを見ていただけだった。

その、何かを腹に決めた表情を。

「じゃあ、今日は友澤くんと原田さん、雨宮さん配膳をお願いします」

そう言われて、佐野くんが雨宮さんを睨んでいた。

さっきの騒動でクラスは二つに分かれていた。

単純にアイヒマン実験の実施組と見学組ではなく、先生役となった人とそれを擁護する人の組、そして人を殺めた先生役を軽蔑することにした組とだ。

まぁ、本当のことを言うと3つなんだけどね。

そのどちらにも入れない、アイツの共犯者として疑われる僕がいるから。

「配るよ。スープリゾットだ、熱いから溢さないように運ぼう」

ドアを開けてカートを入れた友澤くんが、スープリゾットが乗ったトレイを取り出す。

それを見て雨宮さんが続き、そして確かな足取りで原田さんも配膳を始めた。

その姿が妙に嬉しかった。

< 143 / 235 >

この作品をシェア

pagetop