ケンショウ学級
モニターにアイツが写る。
実験後の腹具合からして恐らく。
「さぁ、随分と寂しい教室になってしまったね。でも、元気だしてね!
さぁ、おまちかねの夕食だよ」
すると、教室の前のドアの向こうでいつもの多きな物音がした。
「実験も長くなってきて疲れてるだろうから、消化の良いものを選んでみたんだ。
だから今日も残さず食べてね」
それは、たまたまだった。
特に理由もなく僕はその人のことを見ていただけだった。
その、何かを腹に決めた表情を。
「じゃあ、今日は友澤くんと原田さん、雨宮さん配膳をお願いします」
そう言われて、佐野くんが雨宮さんを睨んでいた。
さっきの騒動でクラスは二つに分かれていた。
単純にアイヒマン実験の実施組と見学組ではなく、先生役となった人とそれを擁護する人の組、そして人を殺めた先生役を軽蔑することにした組とだ。
まぁ、本当のことを言うと3つなんだけどね。
そのどちらにも入れない、アイツの共犯者として疑われる僕がいるから。
「配るよ。スープリゾットだ、熱いから溢さないように運ぼう」
ドアを開けてカートを入れた友澤くんが、スープリゾットが乗ったトレイを取り出す。
それを見て雨宮さんが続き、そして確かな足取りで原田さんも配膳を始めた。
その姿が妙に嬉しかった。