ケンショウ学級
ここへきて三回目の食事か。
スープリゾットのコンソメの香りに、菊の花の香りが自然に混ざる。
小池っちの死を受け入れることができない。
いったいだれが小池っちを殺したのだろう?
分かった所で復讐したり、責める気はないよ。
だって、その人も心を痛めたはずなのだから。
「小池っち、原田さんちゃんと歩けるようになった。声も聞けたよ。
恋は実ってなかったみたいだけど、お前のおかげだよ」
隣の席に寂しく咲く白い菊の花に向けて、僕は小さくそう呟いた。
食事を終えてトレイをカートに戻しにいく。
「えっ…………?」
そこには全く手のつけられていないスープリゾットが乗ったトレイが1つあった。
「配膳は皆にされてた。余り?そんなことあるのか?」
教室を見渡す。
そして僕は、このトレイの主が分かってしまった。
その人は最初から決めていたんだ。
今回の食事に手をつけないことを、だからあんな表情で画面越しのアイツを見つめていたのだろう。
そして、今も黒くなった画面の向こうのアイツだけを見つめ続けている。
「……………………」
僕はゆっくりとその人の席へと向かうのだった。