ケンショウ学級

教室の空気が凍ったように静まり返る。

「上杉くん何を急に言い出したんだ?」

友澤くんの声も震えていた。

「僕の机の中にある本が入っていた。僕は昨日の夜のトイレでそれを見ていた」

「なっ、根暗てめぇ、やっぱりトイレでなにかしてたんじゃねぇか!」

佐野くんががっと僕の襟を掴んだ。

衝撃で一瞬息が止まった。

「けほっ、ごほ。

話を最後まで聞いてよ」

「昨日の夜って、なんのことだよたっちん」

佐野くんが手を離し、そして実施実験に参加していた人達にトイレのことを話した。

「上杉くん、何故君は本のことを言わなかったんだい?」

友澤くんの言葉に僕は正解を見つけることはできなかった。

だから、正直に話す。

「あの時点では僕も半信半疑だったし、っていうか今も半信半疑ではあるんだけど。

昨日の夜の時点で言っていたら僕への疑いが強まるだけだと思ったから言い出せなかった。ごめん」

僕は深く皆に頭を下げた。

「なぁその本見せてくれよ」

そう言ったのは春馬だった。

声色はいつもとは違う。

だけど、僕向けられた言葉に安心してしまう。

「うん、皆で見よう。そして何か対策を考えよう」

僕は自分の机からその本を取り出した。

『心理学実験の概要と効果』

「それって大上先生から借りた本か!」

「そう、そして中身、目次を見て欲しいんだけど」

僕は目次を開いて皆に見えるようにした。

「第三実験の名称は違うけれど『アイヒマン実験』と『ミルグラムの実験』は同一だ。つまり、この実験はこの本に則して進められている可能性が高い」



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