ケンショウ学級
「待って、もしもその本の著者があのモニター越しのアイツだったとしたら、大上先生はアイツにとって何だったの?
大上先生明らかにアイツのことを知ってた。だからあんなに怯えてたんでしょう?」
そうだ。
確かに僕らの目の前で亡くなる前の大上先生は顔色が悪くなるとはどに怯えていた。
いや、正確にはあの日僕らの目の前に現れる前からだ。
「アイツの手下とか?佐野くんが逃げようとした時に殺されたのは監督できないことへの罰だったとか?」
確かにその線は否定できないな。
でもどこか引っかかる。
「私は逆だと思うな。大上先生はいい人で、私達のことを守ろうとした。
だからこそこの本を上杉くんに渡したんじゃないの?」
「手下なのにわざわざ渡すわけはない…………か」
本当にそうなのだろうか?
僕らは根本的な間違えをおかしているような気がしてならない。
勿論、今の僕に正解を導きだすことはできないのだけれど。
何か違和感があるんだよな。
「なあ、オレずっと疑問に思ってたことがあるんだけどさ」
「亮二?」
亮二は申し訳なさそうに口を開く。
僕ら以外とのコミュニケーションが苦手で、他の人と話すときはいつもこんな感じだ。
「皆って本当に死んだのかな?」
……………………え?
「…………え?だって死んだって言ってたじゃん」
どういうことだ?
確かにアイツはそう言っていたじゃないか。
わざわざ、僕らに友だちの死をアナウンスしてまで。
「……………………亮二、そういうことか!」
可能性は低いでも、僅かながら皆が生きているかもしれない可能性が出てきた。
「上杉くんどういうこと?説明してよ」
中澤さんでもぴんとこない。
いや、もしかしたら勉強が出来る人ほど落ちてしまうわななのかもしれない。
「アナウンスだよ」
「は?」
「僕らはアイツにアナウンス(告知)されたことを素直に受け取ってしまっていた。これまでの誰かが死んだと確認したのはだれ?」
ここまで言えば皆が気づいたようだった。
「アイツだけだ。いや、正確にはアイツと白仮面以外は確認してない…………」
佐野くんの言葉に皆がこれまでの回想をしたことだろう。
大上先生、小野さんは目の前だったけど、わざわざ死亡を確認した人なんて居ない。
当たり前だよ。
もしかしたら死人であるそれに近付いてまで確認することができる中学生などいないだろう。
そして、それ以降は全てモニター越しだ。
アイヒマン実験の先生役からしたら壁越しになるけれども。
「もしアイツが僕らを貶めるために誤情報をアナウンスしていたとしたら?」