ケンショウ学級
モニターが点き小さな部屋が写し出された。
何も無い部屋。
扉や窓はなく、心許ない灯りだけが点いている。
三畳ほどの空間だろうか、その真ん中には特殊な椅子が固定され、その前方に鏡が貼り付けられている。
たったそれだけが「ある」部屋だ。
「寺井!!」
小部屋の中心に固定された椅子には、一人の生徒が拘束されていた。
佐野くんの悲痛な叫び。
多くの人は、その寺井くんの姿から目をそらさずにはいられなかった。
特殊な椅子は恐らくは元々は拷問の為につくられたのであろう、強固そうな鉄製の椅子になっている。
その手すりには肘と手首を拘束する為の革製のベルトが備え付けられ、寺井くんの腕の自由を奪っている。
普遍的な四脚の椅子ではなく、脚といえる部分はない。言うなれば、頑強な箱に背もたれと手すりが備え付けられているような状態だ。
寺井くんの足は太もも、膝下、そして足首で、やはり革製のベルトによって固定されている。
「何よこれ。こんなの人間に対する仕打ちじゃないわ」
身体を動かすこともできないように、下腹部当たりで、最も太く丈夫そうなベルトがしめられており、首輪にも似た細いベルトが寺井くんの首に巻き付き顔を動かすことさえできない状態になっている。
寺井くんに許されたのは目と口の自由だけ。いったい何が始まろうとしているのか想像もできなかった。
「やはり、白仮面がいるんだな」
部屋の隅、寺井くんの左後方にあたる角に白仮面が立っているのが確認できた。
やはり、白仮面は罰であってもケンショウの最中は、被験者の側にいるようになっているのだろう。
「やぁ、寺井くん。どんな目覚めかな?
わざわざ自分から罰則を受ける為に食事を残すなんて、いけない子だね。お望み通り君には罰を用意した」
放送に寺井くんが反応したことからも、ここからの放送は寺井くんの部屋と、僕らがいる部屋に流れていることが分かる。
「君に行ってもらう実験は『自我におけるゲシュタルト崩壊』だ」