ケンショウ学級
「自我におけるゲシュタルト崩壊?」
「どういうことだ?」
教室内がざわめく。
その中でも寺井くんに反応はなかった。
異様すぎる空間に、自分のおかれた状況に、反応すらできないのか、それとも。
「これから寺井くんには、ある言葉を鏡の自分に向かって言い続けてもらいます。拒否は即罰を与えますし、特定の言葉以外のことを発することも、口を閉ざすことも許されません」
鏡の中の自分に向かって向かって言葉を言い続ける?
それの何が罰なのだろう。
でも、アイツの仕組む実験にマトモなものがないことは、すでにはっきりとした事実だ。
いったい何がこれから起きるんだ?
「そのある言葉とは…………
『お前は誰だ?』
です」
え?
「自分に向かって、お前は誰だって言うだけ?なんだよこれ」
田口くんの言葉に皆が、同じ事をおもっただろう。
「あぁ、ちなみに、二人称は好きなもので構いませんよ。「おまえ」、「きさま」、「あなた」、「お主」、「そち」好きなものを使ってください。
要は鏡の自分自身に向かって、そこにいる人間は、人と言う一つのまとまり:ゲシュタルトは何か?と、問うて頂ければ良いのです」
分からない。
分からない。分からないけど。
何だか凄く嫌な予感だけは感じとれていた。
「それでは、寺井くん。
鏡に写る人物に問うてください。『お前は誰だ?』とね」
「寺井…………」
モニターを見つめる佐野くんの目にも、不安の色しか伺えない。
これから寺井くんの身に何が起こるのかをしっているのは、恐らくこの中ではアイツだけなのだから。
「お前は誰だ…………?」