ケンショウ学級
そして、それは一瞬の出来事だった。
白仮面が足蹴にしていた右足をわずかにあげて、再度、全力でもって寺井くんの左手を踏み潰した。
おそらくは掌に突き刺さっていたカッターで肉は切り裂かれ、足蹴の衝撃で骨も折れたのだろう。
呻き声と共に寺井くんの顔が苦痛で歪んだ。
そして、白仮面が足を離した瞬間。
バチバチっ!!
寺井くんは電気ショックで命を落とした。
「え、寺井くん…………?」
「嘘だろ?」
黒焦げた寺井くんだったものを見下す白仮面は、右手で負傷した左腕をつかんでいた。
「第四のケンショウ『自我におけるゲシュタルトの崩壊』はこのような結果になりました」
モニターにアイツが写る。
「寺井くんにあんな演技の才能があったなんて驚きだね。是非とも内申点として書いてあげよう。
…………っと、死んでしまっては内申もクソもなかったね。はっはっは!!」
アイツの妙なテンションの高さ。
「いやぁ、実に愉快だ。飼い犬に手を噛まれるならぬ、彼検体に手を切られるなんてね!
愉快だよ。実に愉快で愉快で、このケンショウ学級がもう次回で終幕となることに悲壮感以外の念が浮かばないよ」
人が死んだのに、こいつは愉快だ、愉快だとよくも言えたものだ。
寺井くんが死んでしまった悲しさはあった、どこかで次回でケンショウ学級が終わることへの安堵感にも似た期待はあったのだろう。
でも、それすらも忘れ去れるほどに今の僕はアイツへの憎悪に満ち溢れていた。
「僕はあんたを許さない。僕らはあんたを、アイツの正体を暴いて貴様を殺してやる!!」
僕は画面越しに宣戦布告をしていた。
アイツはただ、画面越しに笑うだけだった。