ケンショウ学級
本当にこいつは何を言っているのだろう。急に中学生に対して事前の告知もなく実験の検証をするとか意味が分からない。けれど、もし……もしもだけど、あの本に書かれているような内容の実験もあるのであれば、アイツの言っていることは残酷そのものでしかない。

それこそ真偽の確認の為に人の命を使う可能性すらあるものも、その中にはあるのだから。

「強制参加で途中退室はできねぇだ?

そんなことになんでオレたちが付き合わなきゃならねぇんだよ」

佐野くんがそう言って椅子から立ち上がった。びくっと体を震わせて、大上先生は慌てて制止しようとする。

「さ、佐野くん待つんだ。

勝手なことはしないで」

「マジで意味分かんない、いこうぜたっちゃん」

「俺も」

「私も」

異様な雰囲気に耐えきれず、佐野くんに続くように席をたとうとする皆。画面越しで表情も見せないアイツは小さくため息をつく。

「強制だと言っただろう?

勝手な行動を取る者にはそれ相応の対応を取らせて頂くことになるよ?」

そう言いながらアイツが笑っていた様にも見えた。

「はぁ、しんねぇよバーカ」

「行こうぜ」

「ま…………」

ガタッっと大きな音がして、大上先生が座っていた椅子が勢いよく倒れた。大慌てで大上先生が扉の前に立ちふさがり佐野くん達を止める。

「どけよ、おい」

「ダメだそれはできない。ここから出てはいけない! 」

「は?マジ意味不なんだけど」

全員の視線が佐野くん達と大上先生の動向に向けられるなかで、何故だか僕はそいつから目をそらしてはいけないと思ったんだ。いや、目をそらすこともできないほど怖かった、というのが本当のところだった。
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