ケンショウ学級
「なぁ、これって上杉くんが罰ゲーム?」
僕に票が集まったのは無理ないことだろう。
「いやでも、分かんねえけど、誰が怪しいって言われたら……なぁ?」
「そうだよね、本のこともあるし」
ほんの少し前までアイツの本を隠していたこと今でもみんなの中で疑心として残っていて仕方がない。
犯人だと思われた人には罰則がある。仕方ないよな……
「……藍斗、お前なんで笑って」
諦めかけて僕は天井を仰いで、無意識に、ほんと無意識に笑っていたらしい。春馬のその言葉で笑っていたことに気づいて、僕の瞳からは無意識に涙が流れ出していたんだ
。
「上杉くん……」
原田さんの小さなつぶやき。
僕はぼんやりとアイツを見た。
「--さて困ったね。得票数1位は上杉くんなんだけれど、過半数には遠く及ばない。
これをクラスの総意とするのはいささか難しいものがある。。。」
なんだ?なんだこの流れは?
僕を罰してそれでお仕舞いじゃないのか?
…………妙な間だ。未だにアイツが何を考えているのかが分からない。
そしてこの後のアイツの言葉に僕は一喜一憂し振り回される。それがどちらであれ地獄の日々であることに変わりはないというのに。
アイツは画面越しに手をパンと叩いて、1つトーンを上げた嬉々とした声で話を始めた。
「--ふむ。ちょうど10人か。
単純に得票数の多かった人に罰ゲームを受けてもらえれば良いかなと思っていたんだけど、実は『最後の検証』は偶数であることが望ましくてね。
次点の人と2人で……でも良いのだけれど次点は友沢くんと中澤さんの2人だし結局3人を罰して奇数になっちゃうんだよね」
何だこの流れは?
もしかして、僕は助かる?
とはいえこれもアイツの気まぐれ次第で決まる。なんなら次点の2人にジャンケンでもなんでもさせてどちらか1人だけと僕を罰すればことは解決する。
狂った殺人鬼であるアイツがどうしてこんなことで悩んでいるんだ?それがたまらなく恐ろしかった。
「では、今回の罰ゲームについては次の実験の際に検討させてもらうとしようかな」
僕はほっと胸をなでおろした。
生き延びた。そう感じたのは僕だけでは無かったようで委員長は天井を仰いで目を瞑り、中澤さんは恐怖の余韻でガタガタと震えていた。
「さぁ、では夕ご飯にしよう。これが皆で食べる『最後の晩餐』になるかもしれない。
よく味わって食べてね」
不吉を孕んだその言葉が意味する恐怖を、僕らが知るのは、いつも通りにもう後戻りが出来なくなった行き止まりに立ってからなんだ。