ケンショウ学級

「で?てめぇはなんで肩見せねぇんだよ偽善者」

佐野くんは春馬を睨みつけながらそう言った。

僕の中の疑念も大きくなる。どうして見せようとしないんだ?まさか春馬が……

「わかったよ。ほら」

ゆっくりと春馬は袖を捲り始めた。手首から腕、肘、二の腕そして肩……

「なんもねぇ。」

良かった春馬の肩に傷は無かった。

「てめぇ、なんでさっさと見せなかったんだよ?」

「こんなことしても誰の無実も証明できないと思ったから。肩の傷なんてそもそもどれだけのものかなんてモニター越し、しかもマントの下なんて誰にも分からない。

かすり傷程度だったかもしれないし、深く傷を作れたのかもしれない。でも、そのどちらかも分からないなら、肩を見せてたまたま古傷でもある人がいたらどうする気だったのか疑問でね」

春馬は淡々とただ事実を言葉にしていた。なんだかやっぱり雰囲気がいつもと違う。でも、これで春馬が白仮面なのかもしれないという僕の中の疑惑は消えた。

良かった。本当に……良かった。

でも、こんな環境下だから仕方ないのかもしれないけれど、僕の中に芽生えてしまった疑念は、それでも軽くなることはなかったんだ。

「あのさ、肩の傷は誰にも無かったからこの中に白仮面はいないのかもしれないんだけどさ。

皆の腕に注射の跡みたいなのない……?これ私だけかな」

緊張した少し震えた声で原田さんは自分の左腕を皆に見せていた。そこには確かに血液検査や献血、輸液をした時の様な赤い跡が数箇所に残っていた。

クラスの皆がそれぞれに自分の腕を見た。僕にもある。

「ほんとだある」

「え、オレないよ?」

「なら反対の腕も見てみたら?」

左腕にある人、右腕にある人それぞれではあったけれど、全員の腕に注射の跡が見つかった。

「なに?なんかやばい薬とか眠ってる内に入れられてたりすんのかな?」

アキラくんが少し震えながらそういった。

「あ、あのさ……」

皆が動揺する中で、か細い声が聞こえた。教室を見渡すとリョージがおどおどとした態度で手を上げていた。

「オレこれがいつからあるのか知ってる。。。かも」

皆の視線が一気にリョージに向いた。そのことにリョージはビクッと肩をふるわせる。

「オレ、注射の時のアルコール?あれのアレルギーがあるのかわかんないけど、注射打った後とか必ず腫れて痒くなるんだよ。

それで気になってたんだけど」

「それでいつからなの!?」

自信なさげに話すリョージに痺れを切らしたのか、中澤さんが詰め寄ってそう聞いた。

リョージは1回視線を逸らして、そして言葉を振り絞った。

「第2実験、『ブアメードの血』?の見学検証の時から」

第2実験の時から僕らは何かしらの注射を打たれていた?

委員長がしばらく考え込み唸ってから皆に話し始める。

「……点滴って可能性はないかな?

ボク達はこのケンショウ学級に呼び込まれて、1ヶ月を過ごす必要があったでも、これまでに何回食事をした?何回眠りについた?」



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