ケンショウ学級
「ふむ、致し方がないな」
アイツの吐き捨てる様な言葉。
この時、大上先生だけがこれから何が起こるのかを理解していたのだった。
勿論僕らはこれから目の前で起こることが、現実に僕らの前で起こるなんて考えたことすらなかったのだ。
「こんな状況だ、幼い君たちが逃げ出したくなることは致し方ないことだよ。
ただ、先生の制止に歯向かうのはいけないな。その責任も幼い君たちではなく大人にあるのだけれど…………」
大人先生はその時にはもう、目に見えるほどガタガタと震えていた。
冷や汗で髪の毛がビッショリと濡れて、パーマのかかった髪の毛がびしっと額に張り付いている。
「では、そんな生徒にしてしまった教師の教育の不行き届きに対して、これから君たちが逃げ出そうとした時にどのような罰を受けるのかを実践しよう」
「ひっ!
待ってください、僕は、僕は」
「ではみんな。
大上先生に注目」
男の言葉に、それまでモニターを見つめていた人も全員が大上先生を見た。
大上先生はまるで先生だけが時間の流れが違かったかのように、一気に老け込んでいるようにも見えた。
いや、明らかに老け込んでいる。
まるで長期間に及ぶ過度なストレスによって身体が壊れてしまったかのような。
「それではお仕置きタ~イム」
「やめ、やめてくださぁぁぁい!!!」
男が意地悪そうに、愉しそうにそう言った瞬間だった。
バチバチ!っと光が大上先生を包みこんだ。
僕らは目の前の光景が何なのか分からなかった。
「あがががががっ!いぎゃああああああああああああっあ」
大上先生の悲鳴と、身体が暴れる痙攣でようやくそれが電気であることに数人が気付く。
そして、人間が焦げた生々しい悪臭を認識した頃には大上先生はピクリとも動かなくなり床に倒れていたのだった。