ケンショウ学級
床で転げ回って完全に動きが止まる。
「…………え、先生?」
「先生!?」
誰もが動くことができなかった。
それでも何人かの勇敢な生徒が精一杯の声を出して、先生に声をかける。
反応はない。
腐った豚肉が焼けた匂いとでも言うのか、そんな不快な臭いが辺りに漂っていく。
「おい、どうなったんだよ?」
佐野くんの焦った声。
アイツはそんな全うな疑問を何故か不思議そうに聞いていた。
「どうなったって…………?
幾ら君たちが中学生でも今目の前で起きたことくらいは分かるでしょ?」
誰もが反応できなかった。
だって…………
「ん、あぁそうか。認めたくないんだね。
でも改めて事実を告げようね」
人は怖いものを避けようとするのに、どうして本当に恐怖を感じるものからは目をそらせないのだろう。
僕の目は動かなくなった大上先生だったものから離れなくなっていた。
「大上先生は死んだ」
男の言葉を聞いた瞬間に誰からともなく悲鳴をあげた。
皆が黒焦げの亡骸を見ても、ピクリとも動かなくなったかつて大上先生だったものを目の当たりにしても、どこかで死んでなどいないと思いたかったからだろう。
しかし、人の死から目を背けることなどアイツは許さなかった。
先生が倒れた扉の近くの人は、転げるように椅子から離れて尻餅をつきながら離れようとする。
中には恐怖から泣いている人。
呆然と立ち尽くす人。
震える人。
そして高みから見下して嗤う人。
「はい、静かに。
まだ大切な話は終わってないよ」
男の言葉は不思議なほどに鼓膜を揺らす。
こんな状況で耳を塞いでしまいたいのに男の言葉を聞かずにいることができなかった。